• コラム

自然を守る香りの話

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こんにちは。ニオイナシというオモテナシ。
伊藤でSHU。

今回は、私たちの生活を豊かにする香りが実は自然を守っているという話です。
特にフィトンチッドについてご説明しています。

身を守る香り成分、フィトンチッド

アロマテラピーなどに使うエッセンシャルオイル(アロマオイル、精油)は植物の花や葉、樹皮、種子などから抽出されているものが大変多いです。
その中に、テルペン類と呼ばれる成分があります。オレンジオイルや、シダーウッド、イランイランなどがテルペン類を多く含む香りです。
これらの香りに含まれるテルペン類という成分は、植物が虫に食べられたり微生物によって病気になったりを防ぐために分泌されています。
いわば植物が自衛のために作り出した成分といえます。
この植物が外敵から身を守るために作り出した自衛のための成分を「フィトンチッド」といいます。

column033_momijigari前回のコラムでは紅葉の話をしましたが、紅葉を眺めながら山林を散策すれば、美しい景色で心が洗われるだけではありません。森林浴という言葉もありますが、森の香りはすがすがしいだけではなく殺菌・消臭効果もあるんです。森の空気を吸うことで心身ともにリフレッシュされるということです。

この「森林浴」効果の一つがフィトンチッドです。
今週は、このフィトンチッドについて考えます。

 

森林浴のの正体、フィトンチッドとは

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木は動けないながらも、生物として繁殖するようにできています。
そのため、その場所の昆虫や微生物など、木に害を与えるものに対抗する術を身につけています。

それが、フィトンチッド(Phyto=植物、cide=殺す)です。
植物が作り出す、揮発性または非揮発性の物質で他の生物・微生物にたいして影響を与える物質を総称してフィトンチッドと呼んでいます。

シナモンの香りのもとのシンナムアルデヒドは、シナモンの樹皮に含まれています。
シンナムアルデヒドは殺菌・殺虫の効果があることがわかっています。
シナモンは、樹皮にシンナムアルデヒドを合成することで害虫から身を守っているのです。column033_cinnamon

 

フィトンチッドのいろいろ(精油)

シナモンがフィトンチッド(シンナムアルデヒド)を利用して害虫から身を守るといいましたが、フィトンチッドは無視や微生物に対してだけ活動しているわけではありません。

薬用ハーブとして人気のセージ(ヤクヨウサルビア)が出すフィトンチッドは、セージの生育を妨げる他の植物の生育を妨げる役目を持っています。column033_sage

また、ラベンダーもまた人気の精油の一つですが、繁殖している場所の高度によって成分が変わります。
標高1100mちかくに生育しているラベンダーは、ラベンダー・アングスティフォリア(真正ラベンダー)といい、ラベンダーの精油の主成分である香りのよい酢酸リナリルが50%近くと大量に含まれています。
低地に生育するラベンダー・スピカには酢酸リナリルの量が少なくなり、抗菌作用の強いリナロールが多く含まれるようになります。column033_lavender

これは、低地ではたくさんの微生物がラベンダーを狙っているため抗菌成分の強いフィトンチッドをたくさんだして身を守っているのに対して、高地では微生物が少ないため、むしろより繁殖するために虫を呼び寄せるためによい香りを出す必要があるからです。

また、同じ標高でも夏は微生物が多く冬は少ないこともあり、フィトンチッドの成分は季節により変わります。

そのため精油も収穫時期、収穫場所によって様々に変わります。

 

生活の中のフィトンチッド

フィトンチッドは、自然の放出するものながら殺菌、防腐効果が強いため、昔から生活に取り入れられてきました。

生活雑貨のほとんどがプラスチック樹脂に置き換えられた現在でも、木の知恵を残しているのが飲食関係です。

ヒノキの板に含まれるフィトンチッドには、カンファ―(樟脳)、α-ピネン、リモネン、カジノールといったものがあります。
カンファ―には防虫・防腐作用があり、α‐ピネンには抗菌作用があります。
そのためまな板や、お寿司屋さんの飯台に使われています。column033_sawara

また、食品を木の葉で包むということもあります。
今はビニール袋やプラスチックのパックに置き換わりましたが、昔ながらの和菓子屋さんや、寿司屋その他の飲食店、ちょっと高めのお弁当では今でも木の葉が使われています。

おにぎりやお寿司を包んだりするササの葉には、ジエチルエーテル抽出物というフィトンチッドが含まれ抗菌作用があるため携帯のための防腐保存に使われてきました。

飲食店の食品ガラスケースにはサワラの葉が入れられていることがありますが、あれも飾りではありません。column033_kaki-susi
サワラの葉にはピシフェリン酸というフィトンチッドが含まれていて、これは強い抗酸化作用があります。
魚介類や肉、油脂といった食材は不飽和脂肪酸が含まれていて、空気に触れることで腐敗が進むのですが、ピシフェリン酸の抗酸化作用にはこれらの食材の腐敗を防ぐ働きがあるのです。

ほかにも、お寿司屋さんにあるワサビ、ガリ(ショウガ)、お茶といったものにも抗菌作用を持つフィトンチッドが含まれています。

桜餅や柏餅はそのものずばり葉っぱで包まれていますが、桜の葉にはクマリン、柏の葉にはオイゲノールというそれぞれ抗菌作用を持つフィトンチッドが含まれています。
桜餅の葉は塩漬けされていてそのまま食べることができますが、クマリン自身は食品添加物として認められていません。食べ過ぎは肝臓によくありませんので気を付けましょう。

(キャッチシューPROは天然鉱物を使用しています。フィトンチッドは含みませんが原料は食品添加物に認められているほど害のないものです。)

暮らしのニオイに引き算を。
また会いましょう、ありがとうございました。